皆で日向ぼっこをしながら島と海と空を眺める時間。
ゆったりとした、南国の時の流れを感じます。
西表島は面積が284.4km²と、沖縄県内では沖縄本島に次いで2番目に大きい島。
その面積のうち優に8割が亜熱帯の原生林に覆われており、
全域が国立公園に指定されています。
「東洋のガラパゴス」とも呼ばれるこの島は、植物、動物ともに四百種以上の生態系が残されていると言われています。
看板によれば道路は東回りに半周存在しますが、
我々は反対に大原から鹿川、船浮へと回る西回りのルートを進みます。
秘境という響きに胸を高鳴らせながら、西表島最初の一日を歩き始めました。
大原港から南風見田(はえみだ)キャンプ場までは道も整備され、見慣れたサトウキビ畑が続いています。
ここにも牛が。
お腹がへります。
暑気と戦いながら進むワンゲル部員たち
とはいえ、この日の最高気温は23.6度。
石垣島のどの日よりも暑く、さらに南国の強い日差しは実気温以上に体感温度を引き上げていきます。
6km前後の平地としては短い行程ですが、早くも暑さという関門が道を阻みます。
とはいえ、そこは熟練の二年生と去年の夏合宿を耐え抜いた一年生達。
これしきの暑さはなんのそのと、遅れることなく時間通りに南風見田キャンプ場までの道のりを歩き終えました。
そこには……
晴れ渡る青空と、それ以上に美しい大海原がありました。
筆者がしばらく海を眺めた休憩所。とても涼しい
島中に実っているアダンの実。繊維質で、食べるのは難しい
食料調達に期待を寄せられていた清宮さんも……
半日で三匹を釣り上げ、「ここは楽園」と喜色満面の清宮さん
お見事!
深まる絆?
三匹釣れたうち、最も大きい一匹以外はリリース
合宿と通して最も釣れたカラフルなお魚。
マトフエフキダイという、スズキの仲間だそう。
丁寧に三枚に下ろして、
網焼きに。
海の命を糧に、感謝していただきます。
思い思いの時間を過ごし、まさに常夏の楽園といった楽しさの有頂天にあった我々。
しかし西表島の真の恐ろしさが姿を現すのは、ここからでした。
3月5日(日)
南風見田浜キャンプ場ーポーラ浜ーナイヌ浜ー小浜ー別れ浜ーサザレ浜ー大浜
西表島二日目。
我々の前に姿を現した難敵、それは……
岩でした。
海岸線を歩き始めると、西表の海岸はほとんどが岩盤でできていることがわかります。
岩盤の上に漂着した岩や石が積み上がり、天然のアスレチックと化した場所。
180°、どこもかしこも岩だらけ
それが西表島南岸でした。
山の岩稜でも見られないほどに大きな岩が、行く手を阻みます。
不安定かつ高低差の大きい足場。
全装状態で越えるには危険かつ、疲労も激しい道のりです。
このルートが困難になった理由、それは潮の満ち引きにあります。
これは三年前、2014年に行われた西表島合宿での、干潮時の写真。
ですが……。
この通り。
干潮の時間は毎日少しずつズレるため、この日に行動可能な時間には、潮が腰の高さまで満ちてしまっています。
このため、難しくともよじ登っては降り、
這い上がっては飛び移って進んで行くしかありません。
こんな危険地帯も、いくつあったか数え切れないほど。
日射もキツく、水分補給なしではすぐに熱中症寸前に。
疲労で頭のネジが緩む筆者
プロテインに魅せられた男、渡邉二年生
今日の獲物を探す釣り人
一部元気な人もいますが……
休憩を取りつつ、行けども行けども近付かない浜辺を目指します。
筆者、トップバッター
終盤には潮が岸壁にまで迫っている箇所もありました。
濡れた岩には苔も生え、とても滑ります。
転倒。
SASUKEばりに岩壁にしがみつき、どうにか越えます。
初めは余裕の表情だった武田くんも……
ぐったり。
それでもどうにか、今日のキャンプ地の大浜に到着。
岩棚からしみ出す水。自然に濾過され、綺麗で美味しい
水場も発見し、ようやく一段落です。
3月6日(月)
大浜ークイラ浜ー鹿川
海岸線沿いに歩き、断崖部を山へと入って抜けるルート。
日を追うごとに過酷さを増す西表島行程の、この日がまぎれもないピークでした。
日の出前から出発。
朝日を浴びながら砂浜、岩場を歩きます。
ですが運悪く直後に急な雨が。
以降は滑る岩を避けるため、浅瀬ならば海の中を歩き始めました。
そして、ブイの吊られた入り口に到着。
ジャングル越えが始まります。
ジャングルと言っても、そこは急傾斜の山道。
さらに入山者も平均して年数人程度のルートのため、
林野庁の結んだ目印を見失えば、すぐに道から外れてしまいます。
葉が固くトゲの刺さるアダンやヤエヤマヤシが鬱蒼と茂り、
鉈と鋸を使わなければ数歩さえ進めません。
さらに林冠、と呼ぶべきでしょうか。
蔓などが重なりあってできた植物の天井が地面と同化し、
天然の落とし穴まで作り出しています。
それに嵌った武田くんは、なんと肩まで落ちてしまいました。
最初の斜面を抜ければ、比較的緩やかな道に。
ジャングルを抜けて、鹿川まであと少し……
と思いきや、
なんと、腰まで浸からなければ通れない場所が。
ロープが設置されていたものの、その先に通れる道はありませんでした。
しかし、ここを越えれば鹿川は目前。
全員、気合でびしょ濡れになります。
着いた!
鹿川はかつて集落が存在した場所でもあり、水場も豊富。
奥は土砂と漂着物で埋め立てられている
湾の近くには、鹿川洞窟と名付けられた洞窟もありました。
一九七一……誰が残した文字でしょうか?
この日は風が強く、重石なしではテントが飛んでしまうほど。
それぞれ疲労も溜まってきましたが、虎の子のお菓子やジュースでコンパを行って励まし合います。
合宿はあと、残り二日。
3月7日(月)
鹿川ー標高132m地点ー網取湾 ウダラ浜
今日の行程は鹿川湾から網取湾まで、二つの湾の間を北上する山越えです。
このルートは、古くは琉球王国が最初に整備したものだとか。
カニも見つけ、幸先の良い?スタート。
沢筋を遡上していきます。
イヤというほど生い茂るマングローブ。
粘土質の泥に足を取られ、かかとが鉛になったかのような重さです。
上級生はいつも笑顔
テンションを上げたり下げたりしながら半分ヤケで踏破していきます。
良いものも見れました。
発達した板根が特徴的な高木、サキシマスオウノキ。
国指定の天然記念物です。
湿地帯の奥に、砂浜の姿が。
ウダラ浜、到着!
この日は行動時間よりも早めに到着できました。
汽水域の浅瀬が続く砂浜に岩はほとんどありません。
玉座に座る清宮さんと、服を干す犬飼くん
代わりに潮が満ちると、テントのかなり近くにまで海面が迫ってきます。
そして、なんと!
この日も釣りに出た清宮さんが、最後に最大の釣果を挙げます。
鯛です!
その名もナンヨウクロダイ。
チヌとも呼ばれ、釣りや食材として人気があります。
体長は20cm近いビックサイズ。
清宮さんは最終的にこの日だけで6匹を釣り上げ、
合宿全体では11匹もの魚を釣り上げるという大成果を挙げました。
焼きでは磯臭さが残りやすいという教訓を活かし、下処理をしてから海水で塩茹でに。
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